《MUMEI》 : : 〆華と猪俣も菖蒲の間を後にした。 二人は紅葉館の長い廊下を無言で歩いてゆく… 出入り業者用の通用口に通じる鉄の扉を開くと… 其所には老芸妓・牡丹が、通用口の階段に腰掛けて、勝負を終えた二人を待っていた。 ―――…ふぅー…。 『もう行くのかい?』 牡丹は煙草をふかしながら、しゃ枯れた声で猪俣に問うた。 『はい……。 もうやり残したことはありませんから… …直美の処に行ってやりたいと思います。』 猪俣は答えた。 前へ |次へ |
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