《MUMEI》

昌平はわたしの背後から腕を回し、抱き着いてくる。これは彼なりのスキンシップらしく、他意はないらしい。他の女の子にも同じことをしているのを見かけたから。

彼はわたしの耳元で囁いた。


「昨日、義仲と一緒に授業サボって医務室で密会してたんだって?なんで俺のこと、呼んでくれなかったのさ〜」


ヒクッと顔の筋肉が痙攣する。


………密会じゃねぇよ!


フツフツとこみ上げてくる怒りを、一生懸命鎮めた。

ここで怒りを爆発させても、なんのメリットもないわ。こんなバカ相手にしちゃダメよ、璃子!

つとめて冷静な声で、わたしは昌平に言った。


「暑苦しいから、離れてくれる?」

「やん☆璃子ちゃんてば、つめたい!」


……気色悪い声を出された。


義仲との噂のこともあって、クラスメートたちが、わたしに注目している。

それなのに、今、こうして昌平とくっついていたら、新たな噂を立てられかねないのに!!


………上手く切り抜けなければっ!!


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