《MUMEI》

わたしは落ち着こうと深呼吸を2回した。
それから完全武装の笑顔を浮かべ、ふたたび義仲に挑みかかる。

しかし、義仲はすでにわたしのことは見ておらず、他の男子生徒たちと一緒に、気絶している昌平の顔に油性マジックで落書きしていた。


…………小学生かよっ!!


つーか、わたしのことはもう無視かいっ!!

少し気に入らなかったが、わたしはコホンと咳ばらいをして、義仲くん…、と穏やかな声で呼びかけた。彼は素直に振り返る。

わたしは瞳を潤ませて、あのね…と猫撫で声で呟く。


「みんなから誤解を招くよーなこと、言わないでほしいの」


義仲は、え?と目をまるくした。

「誤解を招くって、なにが?」

……そこを返すか?この確信犯が。

わたしは内心、イラッとしながら、だからね…と答える。

「ただでさえ、わたしたちって、ヘンな噂が広まっちゃってるでしょ?」


医務室でのこと(鼻血)。
空き教室でのこと(無理チュー)。


……ばれてしまっては困るのだ。


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