《MUMEI》 潤ませた瞳で、上目づかいに松本先輩を見上げる。 「この前お借りしたハンカチなんですけどォ、クリーニングしてみたんですが、やっぱりキレイにならなくって……」 そこまで言うと、先輩は朗らかに言う。 「安物だから気にしなくていいって。捨てていいって言っただろ?」 わたしは必死に首を振る。 「そんなっ!!先輩のモノ捨てるなんて!わたし、できませんっ!!」 涙目でさらに訴えた。 「このままじゃ、わたしの気がおさまらないの……なにか恩返しさせてください」 ズイッと先輩につめよる。先輩はあからさまにドギマギしていて、視線が左右に泳いでいた。 ………もう、ひと押しだな。 前へ |次へ |
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