《MUMEI》

.


「ねぇ…」


わたしはおもむろに呼びかけてみた。


「なに?」


義仲が機嫌良く返事してくる。


「………いつから、屋上にいたの?」


ずっと気になってたことだった。


義仲は考えこむように唸ってから、答えた。


「最初から」


「最初からっ!?」


予想外だった。最初からいたなんて…。


義仲は頷く。


「俺が昼寝してたら、なんか女子たちがゾロゾロやって来てさ〜。なにごとかとおもったら、璃子ちゃん、囲まれてるし。アレ?ちょっとヤバめ?みたいな」


………オイッ!


「気づいてたら助けろよ!!」


義仲の襟首を掴んでまくし立てると、彼はヘラヘラ笑って言った。


「助けようかな〜とおもったら、璃子ちゃんがきれいにハイキック、キメたからさ〜。つい見とれちゃって。あれよあれよという間に、女子たち薙ぎ倒して。アレ?俺の出番ナシ?みたいな」


………。

…………確かに。


わたしは彼の襟首から手を離した。おとなしく体育座りの恰好に戻る。

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