《MUMEI》
イッヒリーベさくら。
結局ガイドブックとメモに書いてあった地図にその文字を見つけて、駅に居た人にそれを説明しながらその周辺までやっとたどり着いた。

(疲れたよ…眠いし…)

きっと彼女は優しいだろうから、会ったら彼女を抱きしめて部屋で少し寝かせて貰おう。

友達の日本マニアに教えてもらった”ひざまくら”というのもいいかもなぁ…。




「誰だ…お前…」
「……」

ドアの向こうから出てきた彼女はドイツ人のように眉間に皺を寄せていて、いぶかしげに僕を睨んでいた。

「あー…ぅ…ι」

実際に憧れの人に会うと無にも話せないって言うけど、コレばかりは…怖くて声が出なかった。

「…アーユースピキングリッシュ?(あなた英語は話せるの?)」
「お、あ…イエイエ!」

そうか、英語は話せるんだ!

僕も英語で…。

「ア、ァ、アイカムヒァ…アイウォンチュー!(ぼぼ僕がココに来たのは…僕はあなたが欲しかったからー!)」



僕はあまり頭の良い方では無く、悪い方から数えた方がいいくらいだった。


だからモデルにしかなれなかったんだけどね…。



「……アユ…キディング?(お前、正気か?)」
「メ、メーンィット!(ほ本気だよ!)」


どう上手く話したらいいか分からなかった。
あなたを一目見て好きになって日本まで来ました、ってどう言うんだろうかとか、あなたの側に居させて欲しいってどう言うんだろう…。


それ以上に、僕のこの気持ちを伝えるには…どうしたらいいのだろう。

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