《MUMEI》

「──此花」

「ぇ」




 菜畑君が話しかけてきたのは、放課後だった。




 ミドリと一緒に帰ろうとしていた私は、肩にかけていた鞄を一旦両手に持ち替えた。




「どうしたの‥? 菜畑君──」

「‥話がある」

「話‥?」




 何だろう‥、話って‥。




「──付いて来い」

「ぇ、ちょっと‥」




 引っ張られて、そのまま‥私は菜畑君に屋上に連れて行かれた。




 ──夕焼け色の空。



 風が、少しだけ吹いている。




「此花」




 菜畑君が、まっすぐに‥私を見る。





「一つ、話しておかなければならない事がある」

「何を‥?」

「‥‥‥‥‥僕は‥」

「ぇ」

「‥‥‥‥‥‥‥」

「菜畑君‥?」

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