《MUMEI》 菜畑君が言っている事が本当なら‥私と菜畑君は同じ夢を見た事になる。 記憶の断片みたいな夢を‥。 「菜畑君‥その桜の事を覚えてる‥んだね‥?」 「──覚えている、と言える程明確な記憶ではないけれど‥」 「でも、一欠片でも残ってるなら──」 「‥‥‥‥‥‥‥」 「どうしたの‥?」 「‥僕が持つのは、本当に一部分の記憶に過ぎない。君の事は‥全く覚えていない。ただ‥‥‥桜‥それだけは夢に見た」 「‥桜‥」 もしかしたら‥その桜が鍵なのかも知れない‥。 ‥けど‥。 それ以上の事は分からない。 菜畑君は、本当に私の事を覚えていない。 けど、桜──あの桜の事は覚えている。 あの桜を見れば、何か思い出してくれるのかな‥。 前へ |次へ |
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