《MUMEI》

「桜‥」




 あの桜は、祇園にある。 祇園の丘に。




 けど‥今もあるのかな‥。




 あれから、もう千年以上経っている。 昔の風景が残されている‥とは限らない。




「どうしよう‥」




 あの桜が‥なくなっていたら。 菜畑君は、記憶を思い出せないかも知れない‥。




「あ、こんなとこにいた──」

「‥ミドリ‥」

「探したよ〜? 全然降りて来ないんだもん」

「ごめん‥考え事してて──」

「菜畑君、何て言ってた‥?」

「──桜の事を覚えてる、って」

「桜‥?」

「うん‥祇園にあった桜」

「それって──ウヅキがコノハ様と会ってた場所にあった桜だよね?」

「──うん」

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