《MUMEI》 嫌な予感二人の背中を見送っていると、騒ぎにつられて廊下に現れた男子生徒たちが、川崎先生の後ろ姿を見て、呟いた。 「あ、川崎じゃん。あいつ、族とやり合うのかな?」 「マジ?見物じゃね?」 「え、ダレ?」 「あれだよ、美術の非常勤講師」 「川崎 宗一。メガネかけた…」 「え〜?いたっけ、そんな奴」 非常勤講師………? わたしは、ようやくひらめいた。 非常勤講師じゃ担当でない限り名前も知らないだろうし、美術という単位も少ない科目では、尚更だ。 なるほど、知らないわけだ。 なんだか、スッキリして清々しい気分でいると、ふたたび、男子たちの話が聞こえてきた。 「川崎ってさ〜、見た目ナヨッとしてっから、みんなにナメられてんだけど、気をつけた方がいいと思うぜ〜」 「なんでだよ」 「あいつ若い頃、相当やんちゃだったらしいぞ。ここらじゃ、負け知らずだったって話だ」 「え〜、あのメガネがぁ?」 「ま、噂だけどなぁ」 あの、川崎先生が。 相当やんちゃで 負け知らず。 ……なんか、嫌な予感がするんですけど。 . 前へ |次へ |
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