《MUMEI》

一希がゴール前にボールを置き、数歩下がる。


そして勢いよく助走をつけて、ボールを蹴り上げた。


「おいっ、凪谷はどうした!?」


「な、凪谷がいない!?」


「探せっ!」


俺のマークについていた三人は、唖然とするばかりだ。


俺はその時既に、遥か前方を走っていた。


一希が空高く上げたボールに皆が気をとられている間、俺は敵軍を掻い潜って走って来たのだ。


「い、居たぞ!!」


だが、時既に遅し。


俺は敵軍のディフェンスと対峙していた。


と、そこへ一希の蹴り上げたボールが飛んで行く。


俺はオフサイドぎりぎりまで行くと、ボールの落下地点に飛び込んだ。


そのまま驚異的なジャンプ力で、ヘディングする。


ボールは俺の頭によって角度を変え、滑り込むようにしてゴールに入った。


キーパーが反応出来なかったことは、言うまでも無い。


あっという間の出来事だった。


「よっしゃあ!!」


右拳でガッツポーズを決め、チームメイトの方へ振り返った。

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