《MUMEI》
・・・・
 「いまはあまり・・・精霊との契約は気が進みません。どうしてですかね・・」
 自分でもわからないと笑い頭を掻く。急ぐ気持ちはないと言えば嘘になるが、急いだからと言ってどうこうなる話でもない。伝説上の精霊と契約。さぞ過酷な困難が待っているのだろう。
 「精霊の力も借りずに彼を捕まえるのはそう容易くはいかないでしょうね。なにか考えでもあるのかしら」
 彼とは青年を指すのか、それとも仮面の男か。
 「いまの話を聞いて何となくですが・・・やってみる価値はあると思います」
 強い瞳で答えるアランに、彼女はある問題を吹っかけた。
 「きみはどうして戦うの?強固な意志がなければ、死ぬことになる。
 きみが首を突っ込もうとしているのはそんな世界よ」
 いままでにない、脅すような声にアランはもう一度考えてみた。確かに生半可な気持ちではいけないことは分かっていた。
 「きみの心だ、きみが一番良く知ってるはずだけど」
 「そ、それは・・・・」

 自分の気持ちと、もう一度向き合う。自分は彼等を追ってどうしようと言うんだろうか。謝罪を求めるのか、罪を償えと言うのか、死ねと言うのか、殺すのか。
 謝罪を求めるつもりはない。そんな事をしてもらったところで気持ちが晴れるはずがないからだ。
 あんな遊びのように人を殺す奴が、罪を償うとは思えない。だから、死ねと言ったところで死にはしないだろう。
 この手で殺す。おそらくそれが答えだろう。
 なら、仲間だという可能性が浮上している彼女はどうすればいい、どうしたい。仲間ならば殺すことになる。あの猟奇的殺人者と何らかの形で繋がっているのなら仕方の無いことだが、もし何の関係もないのならどうだ。
 捕まえる必要も、殺す必要もない。
 自分はどうしたい。何を一番に考えている。
 ハイム様か?クレアか?

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