《MUMEI》

チームメイトの表情は、予想通りあんぐりと口を開いていた。


だけど一人だけ違う奴がいた。


「ナイスプレー、賢史。」


僅かに微笑を湛え、俺にガッツポーズをして見せる。


「おい一希、これはお前のゴールや。」


味方のゴールから敵軍のゴール地点まで、実に正確にボールを運びやがった。


こんな芸当出来る奴は、一希しかおらん。


「え〜、でもゴール決めたのは賢史だろ?」


彼はウニ頭をわしゃわしゃと掻き回した。


そして今度はニッと笑う。


「まあ…俺等がいれば?

怖いもん無し?」


「ったく……。」


大口叩きやがって!


お互いニヤリと口端を吊り上げた。


そこへ喝が飛んで来る。


「おい、いつまで余韻に浸ってるんだ。

さっさと始めるぞ。」


「って……なにすんねや智哉!!」


叩かれた後頭部を仕切りに擦った。


「お前らが悪いんだろ。

ほら、さっさと位置につけ。」


ったく、誰に向かって口利いてんねん。


しかもお前、敵だろ!!

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