《MUMEI》 若い主婦は狙われる火竜久一郎は話を続けた。 「絶対見たいと思って、あちこち探したけど見れなくて。で、日にち置いてアクセスが落ち着いてやっと見れたんだ」 「どうでした?」塚田が興味なさそうに聞く。 「本当にバスタオル一枚だよ。背中が見えるラフなタオルの巻き方だからブラはしてねえよ」 興奮する社長を塚田は心配した。 「でも下は穿いてるでしょ?」 「そこだよ塚田。穿いてるかもしれねえけど、穿いてないかもしんねえじゃん!」 目が輝いている。こういうのを童心と呼んでいいのか、塚田にはわからなかった。 「学食っていう大勢の男女が集まる場所でバスタオル一枚。度胸あんじゃん。バスタオルの向こう側は生まれたままの姿なのか。つまり想像力を刺激されるわけよ」 「妄想力の間違いじゃないんですか?」 「うるせえ。オレが言いたいのはね、絡みがあるわけじゃない。ポロリがあるわけでもない。裸を敵に晒したらヒロイン敗北だからな」 「何の定義ですか?」 「だからオレが探しているのは新しい発想だよ。斬新なストーリーだよ。手足縛って電マはもうワンパターンだろ」 塚田はたまげた。手足縛って電マなんて、そんな残酷な作品見たことがない。それをワンパターンと感じるほど見ているこの人はいったい…。 「火竜さんも気をつけてくださいよ。これから日本も、児童ポルノは所持してるだけで違法って流れになって行きますから」 「大丈夫だ。オレはロリコンには興味ねえ」 「何歳から大人ですか?」塚田が真顔で質問する。 「16からだろ」 「はっ?」塚田は本気で焦った。「もちろん高校生もダメですよ」 「バカ、高校生は立派な大人だよ」 「その感覚を根本的に改めないと、俺まで逮捕されちゃいますよ」 「わかったよ、19歳からにするよ」 「女優使うときは身分証明書を提示させないと」 「細かいことは塚田に任すよ」 火竜は再びネットの海を泳ぎ回り、深海まで潜って斬新な発想のWeb作家を探した。 「いねえな。やっぱりオレが書くわ」 「ダメです」即答。 「ソフトに書くから。オレが本気出して書いたら逮捕だろうな」火竜は笑った。 「それって何の自慢になるんですか?」 二人はそれから一生懸命脚本家を探したが、見つからなかった。 「火竜さん。ケータイ小説サイトも覗いてみましょうか?」 「ケータイ小説?」火竜が顔をしかめた。「ケータイ小説って、女子高生とか女子中学生が書いてんだろ?」 「違いますよ、大人もいますよ」 「大人って言ってもド素人だろ?」 「じゃあ、これ見てくださいよ」 塚田は火竜のパソコンを操作して、ケータイ小説サイトを出した。 「これ読んでみてください。プロフィールに嘘がなければ二十歳の女の子ですよ」 「本当は50だったらどうする?」 「脚本家なんだから年齢は関係ないでしょ」 「まあそうだ」 火竜はとりあえず読んだ。 「若い主婦は狙われる…まあまあそそるタイトルじゃねえか」 若い主婦が産婦人科に行って診察を受ける。 意地悪な女医がベッドに寝かされた主婦に聞く。 「研修医の子たちに見学させてもいいですか?」 「研修医?」 「料金は無料になりますよ」 無料はありがたい。主婦はOKした。すると、ゾロゾロと若い男子研修医が診察室に入って来た。 「ちょっと待ってください。女子かと思ったから」 赤面して慌てる主婦に、女医は厳しく言う。 「今さらダメですよ」 「嘘…」 彼らの前で下半身丸出しは無理だ。 「すいません、やっぱり…」 「ダメですダメです」 火竜は感動の面持ちだ。 「なかなかヤバいじゃねえか」 「火竜さん好みだと思って」塚田も笑う。 「よし、この子に連絡を取ろう」 火竜はプロフィールを見た。 「静果。いい名前だ。あれ、何でメルアドがねんだ?」 「出会い系防止ですよ。メンバーの安全を守るのがサイトの責務でしょ」 「まあそうだ」 火竜も正論には弱い。 前へ |次へ |
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