《MUMEI》
一時中断
「…なぁ、忍。眠くならないか?」

《…なったんだな、お前は》


(バレるか、やっぱり)


「疲れたんだよ、俺は」


部長だからと、特にやる事が増えたわけではない。


しかし





《エイミー関連でか?》


言いづらかった理由を、忍はあっさり口にした。


「…部活中、通訳もやってんだよ」

《彼氏がいるのにか?》


忍の疑問はもっともだった。


(俺だって必要無いと思ったし)


「仕方ないだろ。頼の通訳は、偏りがあるから」

《偏り?》

「正確に通訳しないで、自分に都合いいように伝えたりするんだよ」


例えば、エイミーが自分以外の男の演技をほめたとする。


日本語で言う時もあるが、エイミーは興奮すると英語になるクセがあるようで


ほめられた相手は、早口の英語を理解できずに戸惑う。


そうすると、頼が


『いい気になるなよ馬鹿って言ったんだよ』


…等、事実とまるで違う通訳をするのだ。


《独占欲の固まりだな》

「まあな。ところで、続きは…」

《さっさと朗読して寝ろ》


(やっぱりダメか)


俺は再び台本を開いた。

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