《MUMEI》
朝の支度
「さっさとシャワー浴びて着替えろ」


俺と目が合うと、忍は台本を閉じた。


「読み終わったのか?」

「まあな」

「…そんなに続きが気になったのか?」


(わざわざ来る位)


ゆっくり起き上がる俺に、忍は冷たい口調で言った。


「馬鹿か、お前は。それだけのためにわざわざ俺が来るわけ無いだろう」

「けどさ」


(他に何があるんだ?)


「いいから、その呆けた頭を少しは覚醒させてこい」

「…わかったよ」


朝から口論する気の無かった俺は、あっさり言う通りにした。


俺が戻ってくる頃には、二人分の朝食が出来ていた。


…もっとも、俺の分は配食サービスのおかずだったが。


ちなみに、俺が春休みに入ると同時に祐は専門学校近くのアパートに引越していったから、今は普通の社員が食事を配りに来ている。


それから、祐と同時に葛西先輩は


北海道の、あの


春日さんの家に引っ越していた。


葉月さんの活動拠点はしばらくは、そこになっているらしい。


「…で、本当は何しに来たんだ?」


俺は、改めて忍に質問した。

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