《MUMEI》
三日目
 その日、二人が寝床に選んだのは、すでに荒らされた後の一軒家だった。

昨日のような場所に泊まろうと言うユウゴを、ユキナが恐ろしいほどの顔で睨んできたのだ。

よほど昨日のボロ小屋が気に入らなかったらしい。

 仕方なくユウゴは、一度荒らされた家ならまだ安心だろうと、了承したのだった。

 二人は家に残された菓子などで空腹を満たし、ズタボロにされたベッドで眠りについた。
しかし、神経が興奮しているせいか、なかなか寝付けない。
ゴロゴロと寝返りをうっているうちに窓の外が明るくなってしまった。

 翌朝、やはり疲れは全然とれなかったようで、体がとても重い。
それはユキナも同じらしく、二人そろってうっすら目の下に隈を作っていた。

「あと二日だね」
起床一番に、ユキナは言った。
その声に覇気はない。
「ああ、長いよな」
ユウゴは腕の包帯を取り替えながら答えた。
「あと、どのくらい残ってるのかな、子」
「さあな。もっかい駅まで行くか?」
「……嫌」
「だよな」

ユウゴは包帯を巻きおえると、「よっしゃ」と立ち上がった。
「食料調達、行くぞ。腹一杯食えば、気持ちも浮上する」
「そうかもしれないけど。でも、どこに?もうどこのお店にもまともな食料はないと思うけど」
「店には、な」
ユウゴはニンマリ笑う。
それをユキナは不思議そうに見ている。
「さっき、思い出したんだ。多分、そこならまだ食料残ってると思う」
「ふーん」
「とにかく、ついてこいって」

ユウゴの言葉に頷きながら、ユキナは首を傾げた。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫