《MUMEI》
「歩雪くん!!お昼食べ・・・ふげぇ!!」
「一緒に食べよ〜!!神瀬くん!!」
「お弁当作ったの〜!!食べてくれる?」
「い、痛いし・・・」
今宵は歩雪に弁当を持って近づくと、女子達に突き飛ばされた。
お、恐るべし、女子パワー。
って、私も女だけど・・・さすがに突っ込んでく勇気なんか無いっつーの!!
今宵は1人ノリ突っ込みをした。
傍から見ていると、かなり危ない人だったりする。
そんな今宵を横目で見ながら歩雪は、女子達をスルーして座ったままだ。
あーあ。どうしよう、お昼。
歩雪くんのお弁当、私が持ってるんだよなぁ。
でも、あの女の子達と食べるんだったらいらないか・・・。
じゃあ、どこかのグループに入れてもらって・・・。
「ってうわぁ!!」
「だぁーれだ!?」
悶々と考えていると、誰かの手が今宵の視界を遮った。
こんなことするの、あの人しかいないでしょ!!
「何やってんの、琴吹くん!!」
「え〜!?バレた?」
紘が口を尖らせながら、今宵の顔から手を離す。
よく見ると、細長い指に沢山のアクセサリーがついている。
重くないのかな、あれ。
「こんなことするの、琴吹くんぐらいでしょ!!それに、声で分かるよ!!」
「ぶ〜!!今宵ちゃん、つーまーんーなーい!!」
紘はかわいこぶりながら、口元に人差し指を当てる。
本当になんなんだろう、琴吹くん。
さっきと違う意味で、危ない人なんじゃ・・・。
今宵はかなり失礼なことを思いながら、紘に尋ねた。
「なんか用があったんじゃないの?琴吹くん」
今宵の言葉に、紘はポンッと手を叩く。
「あー、そうそう!!今宵ちゃんを昼メシ誘いに来たの!!」
「え?友達と食べないの?」
「いいのいいの!!オレは今宵ちゃんと食べたいんだからさ♪」
「・・・・・・視線が痛いんだけど」
「そんなの気にしなーい!!」
「そんな・・・」
今宵には、紘を狙っている女子達の視線が痛いほど刺さっていた。
ひぇ〜!!こっちの女の子達も怖い〜!!
見かけもガンガンメイクしてる人達だし!!
「ね、いいっしょ?」
紘は、ダメ?と手を合わせ、片目を瞑って今宵を見た。
うーん・・・。
女の子達は怖いけど・・・。
でも、せっかく誘ってくれたんだから一緒に食べさせて貰おうかな!!
「うん!!いいよ!!」
「よくない」
誰かが今宵の腕を強く引っ張った。
その反動で、引っ張った人の胸にトンッとぶつかる。
「うわぁ!!」
「オレの弁当、こーが持ってるんだけど」
「ふ、歩雪くん!?」
今宵の腕を引っ張ったのは、歩雪だった。
いつのまに抜けてきたんだろう、あの大群の中から・・・。
「どうしたの?歩雪くん」
今宵が歩雪の顔を見上げると、歩雪はムスッとした顔をしていた。
う、わー。この顔してるときの歩雪くん、怖いんだよ〜!!
皆はいつもと変わんないって言うけど!!
「行くよ」
「え、ちょっと、歩雪くん!?ご、ごめんね、琴吹くん〜!!」
今宵は紘に謝りながら、歩雪に腕を引っ張られていった。
も〜何なの?
意味分かんないよ〜!!
「ふ〜ん。神瀬って結構おもしろいヤツじゃん!!」
紘は今宵と歩雪の後姿を見送りながら、ニカッと笑った。
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