《MUMEI》

「……先生は、旧水上堂ですよね。」

少年にはまだ舞った花の残り香がした。


「松子は……、どうしたんだ。君が舞っていたということは松子は居ないということだ。」

昨日は晩くまで最終日の水上姫の舞の練習で堂に居た筈……まさか、


「松子さんは病でした、薬を取りに家に戻って居たんですよ……昨夜は先生を殺そうとしてた会議中だったでしょう。」


「だからと謂って松子が居なくなる理由にはならないだろう。」


「松子さんと愛し合ってましたよ。まるで首塚斬士郎の唯一愛した艶子との関係のように。」

松子が?まさか、あんな卑しい男と……





「二人は夫婦でしたから。」

彼が嘘をついているようには見えない。

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