《MUMEI》

ボールが中央の、サークルの中心に置かれた。


それに向かい合う智哉と俺。


「言っとくが手加減はせぇへんからな?」


「分かってるよ。

俺だってそのつもりだ。」


智哉はこの倶楽部の副キャプテンになるほどの実力だ。


決して舐めては掛かれない男。


お互いボールから目を放さずに数秒間。


審判のコールがけたたましく鳴り響いた。


「っらあ!!」


「っく!!」


コールと同時に、智哉が素早くボールを奪い去る。


俺の右斜め後ろにいた奴は、もう既に抜かれていた。


畜生!!


慌てて智哉を追いかけた。


「ちょいまてや!!」


「待てるか!!」


二人並んだ所で、壮絶なボールの奪い合いが始まる。


っのやろ!!


スライディングでカットした。


よし、反則のコールは鳴らない。


来た道と逆方向へ体を向けた。

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