《MUMEI》

 ‥取り残された私達。




 買い物を済ませて外に出たはいいけど‥‥‥どうしよう。




「此花」

「‥!?」

「何をびくびくしているんだ‥?」

「‥ごめん‥」

「──帰ろう。暗くなってきた」

「うん‥」




 菜畑君の後に続いて、私は歩き出した。




 けど、あまり早くは歩けない。 どうしても、距離を取ってしまう。




「‥何故そんなにも後ろを歩く‥?」

「ぇ‥、だって‥」

「もし‥桜が残っていたとして──」

「うん」

「‥全てを思い出せるとは限らない」

「それでもいいんだ」

「此花‥?」

「記憶はともかく──確かめたいの。私達が、あの場所にいたって事を」

「それが叶えば──君は満足なのか」

「──うん」

「‥なら、ひとまず家路を急ごう。夜道は色々と物騒だからな」

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