《MUMEI》

「来ないとでも思っていたのか?」

「別に、そんな事ないけど?」




 ミドリは、開けかけていたお菓子の袋をリュックに戻すと、腕時計に目を向けた。




「そろそろ行く? 席座っとこうよ」

「──そうだな‥。此花、行くぞ」

「──ぇ、うん‥」




「どうかしたか」

「ううんっ、全然‥」




 何で私‥こんなにドキドキしているんだろう‥。




「サクヤー、早くおいでーっ」

「ぁ‥‥‥ごめんっ」




 ──私を挟んで、ミドリと菜畑君が座った。




 菜畑君は、窓の方を向いたきり。 ミドリは、早速お菓子の袋を開けた。




 私はというと‥。




 すっかり緊張しきって、固まっていた。




「‥‥‥此花」

「ぇっ‥何?」

「呼んでみただけだ。要件はない」

「ぇ‥?」




 どうして菜畑君は、今私の事を呼んだんだろう‥?

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