《MUMEI》

「あー、もしもし?うんうん、優子だよぉ。えー、本当に?でも悪くない?…うん、ありがと。嬉しい。じゃあ後でね、ばいばーい。」

甘えた声を出していた優子は、電話を切った途端、いつものようなやや男前の声に戻った。

「これでエルメスのバックが手に入る。」

不気味に笑った優子に釘をさす。

「ちょっとー、また貢がせてるわけ?あんた、いい加減にしないとバチ当たるよ。」

「男嫌いに言われたくないしー。それにいざとなったら、暴力団が付いてるから
大丈夫。」

「それは知ってるけどさー…。」

「あと、セックスは避けてるから大丈夫。また、好きな人ができた時の為にとっとくし。」

もう脱力するしかなかった。この人はある意味すごい。
まぁ、きれいな顔つきをしてるからできることなんだろうけど。

「てゆーか。あんたこそ大丈夫?って感じなんだけど。早いとこ直しとかないと、将来結婚とかできないよ?したいんでしょ?」

「えー、別にその時はその時で一人身でも全然いいし。」

「うわー、こりゃ駄目だね。女捨ててるわ。」

優子は眉をしかめると、自分の席に戻った。

その後、一日の長い長い授業が始まったのだった。

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