《MUMEI》

 私は、かなり眠っていたらしかった。




「サクヤ、ほら──着いたよ起きて」

「‥ぇ、もう京都‥?」

「うん、着いたよ」

「───────」




 着いたんだ‥京都に‥。 昔の故郷に──。




「‥ゎ‥」




 風景を目の当たりにした途端、懐かしさが込み上げてきた。




 ──私は、この場所にいた。




「さてっ、丘を探さないとだよね」

「うん」




 あの丘があったのは祇園。 祇園に行けば、何か手掛かりが掴めるかも知れない。




「まずは‥電車に乗らなきゃ。えっと‥駅はどっちだっけ‥」

「あっちみたい」

「ミドリ‥?」

「うん、あっちだ。二人共付いて来て」

「うん──」

「ほらっ、菜畑も早く」

「‥‥‥仕方無い、君の勘に任せるとするか」

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