《MUMEI》

 ミドリのお陰で、無事に駅に辿り着けた。




 電車に乗って、目的地を目指す。




「──丘、残ってるといいよね」

「──うん」




 残っていて欲しい。 ‥あの丘が‥なくなっていたら‥。




「此花、ぼんやりしていると乗り過ごすぞ」

「‥ぁ‥ごめん」




 昔とは‥随分景色が変わっている。 当たり前の事だけど‥。




 建物も、町並みも、何もかも──。




 こんな中に、あの丘が残っているのかな‥。




「祇園の近くには‥平安京があったんだよな」

「うん」




 今はもう、残っていないけど‥。




「──ぁ」

「どうしたのミドリ‥?」

「近いかも」

「ぇ」




 近い‥?

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