《MUMEI》

「ミドリ、近いって‥?」

「あたし、丘の場所分かるかも」

「本当?」

「うんっ」




 ミドリは頷いて、窓から景色を見渡す。




「───────」

「ミドリ‥?」

「丘は‥まだある」

「ぇ」

「まだ残ってるよ、丘」

「桜も‥?」

「うんっ、残ってる」

「じゃあ、その場所が分かれば──」

「祇園の辺りに着いたら、一旦降りてみよ」

「うん、分かった」




 ──少しして、私達はバスを降りた。




「──丘‥‥‥丘‥」




 ここからは見えないみたい‥。




「ねぇサクヤ、丘の近くって何があったか覚えてる?」

「丘の近く‥?」




 あの丘の近くには、長屋が並んでいた。




「近くは──賑やかな問屋街みたいな感じだった」

「まだそれらしいとこ残ってるかな‥」

「分からないけど‥」

「ま、とにかく探すしかないね」

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