《MUMEI》 駅に着き、解散すると、優子がにやにやしながら近づいてくる。 「ちょっとー、いい感じだったじゃない?」 「は?」 「鈍いんだからー。成田のことよ。」 「成田?」 聞き覚えがない名前だ。 「あんたとずーっと話してた男のこと。」 「あ、あのファンタ男か。」 優子は眉をひそめる。 「は?ファンタ男?」 「や、なんでもない。」 ははっと笑いながら、私はふうっとため息をつく。 危ない。口が滑った。 「ふーん?まぁんなことはどうでもいいけど、気が合ったんでしょ?」 「うん、まぁね。なんか女友達が増えた感じ。」 そう言うと、優子は思いっきり顔をしかめて、私の額に手を当てた。 「あんた大丈夫?熱あんじゃないの?」 「ないからっ。」 私は優子の手を振り払う。 「ま、それはそれとして。徳山さ、ずっとあんたのこと見てたよ。」 「え?」 「やっぱり、気づいてなかったか。……ちなみにさ、今日徳山を狙ってたのって誰だか知ってる?」 「いや……。」 「綾音。」 って だから何なのよ 「なーんか面白いことになりそうなんだよねー。」 優子が不気味に笑う。 私は訳が分からなかった。 前へ |次へ |
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