《MUMEI》

 ‥かなり、歩いた気がする。




「見つからないね‥」

「何か疲れてきた‥。タクシー拾う?」

「場所が分からなければ同じ事だ」

「‥はぁ、そうだよね──。‥サクヤ?」

「この近くで‥私‥住んでた事がある」

「ぇ」

「こういう長屋の、空き家に住んでた」

「‥他に何か覚えている事はあるか」

「──祇園に向かうには、西に行ってた」

「西‥?」

「うん」

「‥西か‥」





考え深げに、

菜畑君はその方角を見る。





「‥西へ向かおう」

「ぇ」

「君の記憶が正しとすれば、西に向かえば丘が見つかるかも知れない」

「───────」

「ぼんやりしている暇があるのか?」

「‥ぁ‥ごめん」

「──よしっ、じゃあ西に行ってみよっか」

「うん」



 菜畑君の助言から、私達は西に向かう事にした。

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