《MUMEI》

「ちょっと、あんた何やってんのよっ。」

終礼が終わるとすぐに、優子が私の方にやってきた。

「…何もやってないし。てか、これから掃除…。」

「んなことどーでもいいの。怜、あんたまた成田と喧嘩したの?」

このフレーズ…
言われることは大方予想がついた。

「いや、喧嘩したっていうか、口論ってか…」

「色気出しなさいよ、色気を。」

優子が私に近づいてくる。
優子の妖艶な唇に動揺してしまう。
カモの気持ちが分かったような気がした。

「だから、色気も何もないわけ。男嫌いなの、分かった?」

優子がため息をつく。

ため息をつきたいのはこっちの方なんですけど。
男嫌いだって言ってんのに…。

「…じゃあ、これだけ。掃除しっかりね。私今からカモ2号とデートだから。じゃね。」

言いたいことだけ言った優子は、手をひらひら振ると、さっさと帰っていった。



『掃除しっかりね。』

という言葉だけが頭の中で響いていた。

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