《MUMEI》 「──サクヤ、サクヤー?」 「‥‥‥ぇ」 「どしたの?」 「ぁ‥‥‥、思い‥出してたんだ」 「前世の事‥?」 「──うん」 あの草子を受け取ったのを最後に、私は黄羽様に会う事は出来なかった。 「‥‥‥此花」 「何‥?」 「───────」 菜畑君は、ただ黙って‥ある一点を示した。 「‥‥‥ぁ」 あの木‥。 「えっ‥もしかしてあれ‥?」 「──うんっ」 見つけた‥。 間違ない。 あの桜だ。 「あっ‥サクヤっ」 「──来てっ」 「‥うん、分かった。菜畑、行こっ」 「‥‥‥君に言われる筋合いは無い」 「何でもいいからとにかく来てよ」 「──分かっている」 前へ |次へ |
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