《MUMEI》

 ──丘の麓に着いた。




「‥ここだ‥」




 私が、あの人を待っていた丘。




「───────」




 ゆっくりと、私は丘を登り始めた。




 ──あの頃と、同じ気持ちがする。




「───────」




 毎日、訪れていた場所。




 あの人を、待っていた場所。




 あの人との、思い出の場所。




 ここは、私の記憶の原点──。




「‥‥‥ぁ」




 桜──‥。




「うわぁ、綺麗──」




 後ろから付いて来ていたミドリが、歓声を上げた。




「しかもすっごくでっかい‥」

「千年以上も前から立っているんだ。大きくなるのは当たり前だろう」

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