《MUMEI》
大団円その2
「分かっていた…分かっていたのだよ、こうなることは…いや、望んでさえいたのかもしれない」

ビリビリーンは、今までに見せたことのない穏やかで優しい表情をしていた。

「あぁ…ハチよ、息子よ…大きく…本当に大きくなったな…」

ハチの頭に手をやるビリビリーン。

「父さん、父さぁん!」

涙でぐしゃぐしゃになっているハチの顔。その体と声は震えていた。

「泣くな息子よ…辛い時、悲しい時こそ…」

ビリビリーンの手がゆっくりとハチの頬に触れ

ぐいっと押し上げた。

ハチの口はつり上がり、まるで笑っているかのような表情になった。

「笑うんだ。そう、教えただろう…忘れるんじゃないぞ…」

「父…さんっ………!」

ブランとビリビリーンの手が落ちた。

しかしハチは笑みを絶やさなかった。

父に言われた。その笑顔を忘れるなと。

ハチはそれを守った。

真っ赤に腫れた目、涙で濡れた頬

しかし、その笑顔は崩さなかった。

父の最後を見送る、最高の笑顔。

ビリビリーンは、今わのの際で

ようやく人間に戻ることができたのだ。

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