《MUMEI》

「ぅわたしは…拝見した…あなた…ドイッチュ…ι」
「…あぁ、ドイツで…拝見?…見たって事ね…この前居たからねぇ」

日本に来る飛行機の中で勉強した日本語が通じたみたいだ!
でも、これ以上はあいさつ程度しか分からないし…。

どうしよう…。


「ヴォコメンズイーヘァ?(あなたドコから来たの?)」
「ァ///…コメアウスドイッチュランド!(ドイツから来たんだよ!)トル、ズイーシュプレッヘナウフドイチッュ(よかった、あなたはドイツ語が話せるんですね!)」

彼女がドイツ語を話してくれた!
それだけでも救われた気がしてすっごく嬉しかった。

「…ぁ…何言ってんだ?」

…あれ…やっぱり早口は通じないみたいだ、そりゃそうだよね。




「ぅう……プリーズ ワンスモア チャンス…」

僕は”もう一度チャンスをくれ”と、顔の前で指を一本立てて彼女の様子を伺った。

「オーケィ、アイムウェイティング(分かった、待ってるよ)」

彼女は元気よく僕を見て頷くと、バタンと扉を閉めてしまった。



(うーん…日本語ではどう言うんだろう…)

アパートの廊下に座り、持ってきた辞書を引きながらメモ帳に一生懸命書いてる間、彼女は格子の付いた窓から肘をついて僕の事を眺めてくれていた。

一目見た時からそういう人だと思っていた。

何て言うか”お姉さん”のような、違うな…もうちょっと包容力のある”母親”という感じがした。

だから僕の”母親”のような”恋人”になって欲しかったんだ。




「ワンチャンサゲィン(またチャンス)、プリーズワンスモァ(もう一度お願い)!」
「オーケィ」

また部屋の扉をノックすると、彼女は扉を開けて僕の話を聞いてくれた。


「おねっがい…ぅあたし…を…あなたっの……でっしにして、カワイーしてくさい!」
「うっ///……で…丁稚?…弟子?」

彼女はちょっと笑いながら、分からない所を聞き返してきた。

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