《MUMEI》

「素っ気ないなぁ菜畑は‥」

「君にそんな事を言われたくは無い」




 菜畑君は、ミドリから顔を背けると‥桜に近付いた。




「───────」




 まるで、吸い寄せられるかのように‥菜畑君は一歩一歩近付いて行く。




 けど、ふと立ち止まって目を細める。




「菜畑君‥?」




 風が、ザァッと吹いた。




 菜畑君は、桜を見つめたまま動かない。




「菜畑‥君‥?」




 ‥どうしたんだろう‥。





「菜畑君、大丈‥」

「‥知っている」

「ぇ」

「僕は‥‥‥この場所を知っている」

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