貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
何も無い。
息を切らせて階段を駆け上がり、今出て来たお客さんとぶつかりそうになりながらも、いつもの喫茶店に入る。

アキが居る方へ歩く。

「早かったじゃん」

きっと第一声はこんな感じだろう。



たった数歩が、とてつもなく長い距離に感じる。

まるで、スローモーションの世界。




ふと、
時間が完全に止まった気がした。





「アキ…?」



アキが居ない。
アキの笑顔が無い。

アキ、
アキ、
アキ…?







きっと、そこら辺に隠れて、今にわたしを驚かそうとしてるんだ。

タイミング悪くトイレにでも行ってるのかも知れない。

もしかしたら、わたしを迎えに駅に居るんじゃ?

…それはない。
『ここで』待ち合わせてるんだから。






いろんな考えが頭をよぎる。




そして、
ここ1ヶ月間、アキに依存し過ぎてる自分自身が急に怖くなった。


今なら家に帰れる。
誰も家出に気がついて居ないんだし…。




また、弱気なわたしが目を覚ます。









その時、

「ごめんごめん。思ったより全然早かったんだね」

後ろから、
アキの声がした。




わたしは振り返ることが出来ないで居た。

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