《MUMEI》
仲間結成?
「はぁ〜。散々だったなぁ、さっきは」
今宵は机に頬杖をつきながら、溜息をつく。
「遅くなんないようにって言ったのに・・・。あんたら何してたの」
「いや、色々と・・・」
今宵は走りに走って教室までついたものの、既に授業が始まっていた。
そおっと入ったつもりだったのに・・・。
先生に『お前、今日放課後雑用決定』と青筋を立てられ、隣の琴吹くんには『どんまーい♪』とバシバシ背中を叩かれる始末。
それでも一番堪えたのは歩雪くんの、『・・・・・・はぁ』っていう溜息が聞こえたことだったなぁ・・・。
秋葉ちゃんは、『馬鹿じゃないの?』っていう目で見てきたし。
今宵はさっきの地獄のような時間を思い出していた。
「こー。皺寄ってるよ、ココ」
歩雪は今宵の眉間を、人差し指でトンッと押す。
「しょ、しょうがないじゃん!!」
もう考えることがありすぎて、頭が一杯なんだよ〜!!
今宵は思わず頭を抱えた。
「大変そうだな〜!!今宵ちゃん!!」
「琴吹くん・・・・・・」
今宵はゆっくりと顔を上げる。
「オレでよかったら、話聞いたげるよ!?っていうか、オレも仲間に入れて!!」
「な、何それ?」
今宵は琴吹の発言に、スルッと力が抜けた。
「お前らかなりおもしろすぎるし!!いいだろ?神瀬!!」
「別に」
歩雪は紘からふいっと顔を逸らした。
「でも、いつも一緒にいる友達はいいの?」
「いいの!!あいつらはオレの表面しか見てないんだよ。・・・今宵ちゃん達なら、ちゃんとオレを見てくれると思ったから!!」
「琴吹くん・・・」
嬉しいな。
こんなこと言われるなんて思って無かったよ・・・。
「ていうか、今宵ちゃんって周りのこと気にしすぎじゃね?もっと自分のことだけ考えてもいいんじゃないの?」
「・・・・・・そうかな」
「そうだって!!」
最高の笑顔を浮かべる紘と反対に、今宵の顔から笑みが消えた。
またこんなこと言われるなんて思わなかった。
琴吹くんは、私の為を思っていってくれてるのは分かってるんだけど・・・。
でも・・・。
どうしても、あの時のことを思い出しちゃうよ・・・。
「どうしたの?今宵ちゃん!!」
「え?なんでもないよ?」
心配そうに声をかける紘に、今宵は慌てて顔に笑みを作った。
ダメだ。
皆に迷惑かけないようにしなきゃ!!
明らかな作り笑顔の今宵を、歩雪は黙って見つめていた。
安心した紘は、マシンガントークを続けた。
「じゃあ、これから宜しく〜!!オレのこと【コト】とか【紘】とかでいいから!!今宵ちゃんも!!あ、別にどうしてもって言うなら、【紘りん】とか【紘ぴょん】とかでもいいから〜♪」
最後の方に紘がお得意の、かわいこぶったポーズでもじもじとし始めた。
そんな紘を今宵と歩雪は、白い目線で見つめる。
「よろしくね、【琴吹くん】!!」
「【琴吹】、あんた大丈夫?」
「そんなに即答すんなよ!!しかも普通にスルーしてるし!!」
今宵と歩雪が揃って光の速さで即答すると、紘は突っ込んだ。
琴吹くんって本当におもしろいな〜!!
歩雪くんが笑ってるのも珍しいし・・・。
私のことは失礼なぐらい笑うくせに、他の人がいるときは滅多に笑わないんだよね。
今宵の視線の先にいる歩雪は、僅かだが笑みを浮かべていた。
「じゃあ、あたしがよんであげるわよ?【コト】」
「秋葉ちゃん!!」
いつのまにか秋葉が、今宵たちの前に立っていた。
「秋葉ちゃんだけだよ〜!!こいつら2人して冷たいんだから!!」
「そんなのあんた見てたら、当たり前じゃない。暑苦しいもの」
さっきとは裏腹に、秋葉は紘をばっさりと切り捨てる。
「がーーーんっ!!紘くんショック!!」
「琴吹くん、落ち着いて・・・」
今宵は紘を抑える。
確かに暑苦しいよね。
本当に歩雪くんと正反対だなぁ・・・。
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