《MUMEI》

「黄羽様は、約束を破った訳じゃないよ」

「君はずっと待ってくれていただろう」

「───────」

「君の夢を何度も見た‥。この桜の木の下で、君は僕を待ち続けてくれていた‥」

「今、こうして会えたじゃない」

「っ?」

「うづきと黄羽様」

「──そう‥なのか?」

「だって、私とアゲハ君はうづきと黄羽様だから」




 するとアゲハ君は、微かに笑った。




「──そうだな」




 ミドリが戻って来たのは、その時だった。




「ごめんごめん、ちょっと神社の方に行ってて──」





 そう呼ばれて、私は驚いた。




 『うづき』──。




 今、菜畑君は私の事をそう呼んだ。




 何年振りだろう。 そう呼んでもらえたのは。




 何年待望んだだろう、この瞬間を。




 何度、夢見ただろう。




 この場所でもう一度、この人の笑顔を見る事を。

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