《MUMEI》 「黄羽様は、約束を破った訳じゃないよ」 「君はずっと待ってくれていただろう」 「───────」 「君の夢を何度も見た‥。この桜の木の下で、君は僕を待ち続けてくれていた‥」 「今、こうして会えたじゃない」 「っ?」 「うづきと黄羽様」 「──そう‥なのか?」 「だって、私とアゲハ君はうづきと黄羽様だから」 するとアゲハ君は、微かに笑った。 「──そうだな」 ミドリが戻って来たのは、その時だった。 「ごめんごめん、ちょっと神社の方に行ってて──」 そう呼ばれて、私は驚いた。 『うづき』──。 今、菜畑君は私の事をそう呼んだ。 何年振りだろう。 そう呼んでもらえたのは。 何年待望んだだろう、この瞬間を。 何度、夢見ただろう。 この場所でもう一度、この人の笑顔を見る事を。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |