《MUMEI》
蟻地獄
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―――…その頃。



北海道の、とある港町にあるレストランで、みすぼらしい身なりの中年男と、派手な装いの女が、テーブルを挟んで対峙していた…。



中年男「ほ…本当にいいざんすか…?」



ドンブリ頭をした弱々しい男が、何やら同席者の女に念を押していた。



中年男の名は、天丼マン…



初老に手が届きそうな、いかにも冴えない風貌の男だった。



彼の目前のテーブルには、豪華な地中海料理の数々が並んでいる…。



男の腹の虫が、そこから漂う香りにつられ、ひっきりなしに鳴いていた。



おそらく何日も満足な食事を採っていないのだろう…。

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