《MUMEI》

「にしても、この桜ほんと綺麗だよね──」

「うん。本当に」

「こんなにいいとこなのに、知ってたのはサクヤと菜畑位だったんでしょ? 穴場だったんだね──」

「元々ここは‥問屋街からは離れていたし、人気も無かったから気付かれにくかったんだろう」

「もったいないよね、何かさぁ」

「ぁぁ‥、まぁこうしてこの桜が残っていたのは‥ある意味奇跡だな」

「何かいいよねー、桜って」

「そうだね──」





 桜って、不思議な花。





「───────」

「アゲハ君?」

「少し──じっとしていてくれるか」

「ぇ‥」




 私の髪──丁度右耳の少し上辺りに、何かが差し込まれた。




「‥?」




 髪飾り‥?




「──菜畑家でずっと保管されていた物だ」

「保管‥?」

「ぁぁ。ずっと不思議に思っていた。‥だが、これを僕が持っている理由を──やっと思い出した」

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