《MUMEI》 七森先輩。夕暮れ時の放課後、渡り廊下を歩いていると可愛い双子の天使を見つけた。 「久しぶりだね、かなた君」 かなた君にそう話しかけると、ちょっと分からなかったみたいでキョトンとしていたが、しばらくしてから思い出したようで、夕日のように頬を赤く染めながらまん丸な瞳で僕を見上げていた。 「…かなた…誰だ」 「あ、あのね…先輩なの…はるちゃんが居ない時にお世話になっちゃったの///」 「お風呂の時にね♪」 「ぅ…うん…///」 かなた君は兄のはるか君に、お風呂で上せて助けてもらったんだと説明していた。 「また…俺が居ないからって、風呂で泳いで上せたりしたんじゃないのか…」 「うっ!」 「そんな所だねぇ」 「えぇっ!…ぁ…うんι」 かなた君はどうしていいか分からないという様子でオロオロしていたので、そのヒヨコみたいな頭を撫でながらにっこりと笑いかけた。 「あの時は…」 そう言おうとした瞬間、僕とはるか君の間に割り込んで「はるちゃん!俺、先輩と話があるから///」と言って、はるか君の背中を押して半ば強引に部屋に帰すと、僕の方に向き直った。 「ごめんなさい…先輩///」 「いいや、お兄さんに聞かれたく無いのかな?あの、お風呂で僕がキミにしちゃった事」 「ぅ…///」 『キミにしちゃった事…』 そう言うとかなた君は頬を赤く染めながら俯いてしまった。 「謝ろうと思ってたんだ…ごめんね」 お風呂でかなた君にイタズラしてしまった事を謝らなきゃと思っていたので、その事を言うと、目を大きく見開いて僕を見上げてきた。 「うっ…せ…先輩///」 かなた君はテンパっていたからすぐに逃げていってしまうかと思ったんだけど…かなた君は何か言いたいことがあるみたいで僕を見たり、また視線を下に戻したりしてモジモジしていた。 「緊張してる?向こうに、行こうか?」 そんなかなた君を渡り廊下のバルコニーに連れていくと、落ち着くように背中を撫でた。 前へ |次へ |
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