《MUMEI》

「理由‥?」

「その髪飾りは‥僕が黄羽だった頃、うづきに渡すつもりでいた物だ」

「私に?」

「ぁぁ。‥結局、渡せずじまいだったけれど‥」

「──ずっと‥持っててくれたんだね。私に渡してくれようとして」

「‥不思議と‥何か大切な物のような気はしていた」

「──ありがとう、アゲハ君」

「‥‥‥‥‥‥‥」

「あ、菜畑照れてる」

「‥‥‥煩い」




 アゲハ君はミドリを一瞥すると、手を伸ばして桜の花に手を触れた。




「───────」

「アゲハ君?」

「こっちの方が綺麗だな」

「ぇ?」

「内裏にも桜はあったが‥こっちの方が綺麗だ」

「そうなんだ──」




 私には、それがちょっぴり不思議だった。

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