《MUMEI》

◇◇◇




『黄羽様──』

『様は止せ』

『でも、貴族の方ですし‥』

『──‥分かった。好きにしてくれ』

『‥あの‥、黄羽様』

『‥?』

『黄羽様も桜お好き‥なんですか?』

『ぁぁ‥』




 黄羽様は、本当に桜が好きみたいだった。




 黄羽様と桜を眺めているひと時が、私にとっては特に幸せだった。




 黄羽様と見る桜は、独りで見るよりも──ずっと綺麗に見えた。




『──君はいい場所を見つけたな』

『いい場所‥?』

『ぁぁ』

『──偶然なんです』

『偶然‥?』

『花摘みに行く途中で迷ってしまって‥。そうしたら、この丘を見つけて』

『君は運がいいんだな』

『運‥ですか?』

『ぁぁ。──君は運がいい』




◇◇◇

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