《MUMEI》
六章 フタリノオモイ
「──アゲハ君」

「‥どうした‥?」

「ありがとう」

「何だ、急に‥」

「ありがとう、アゲハ君」




 どうしても、言いたくなった。




 ありがとうって。




「──こちらこそ」

「ぇ‥?」

「──君が僕を忘れずにいてくれたから──僕は君を──うづきを思い出す事が出来た」

「アゲハ君──」

「──君には感謝している。有り難う」




 アゲハ君が、笑った。 ──優しい目をして。




「さて──もう一歩きするか」

「──ぁ」

「‥?」

「鶯──」

「‥ぁぁ、本当だ‥。懐かしいな‥」

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