《MUMEI》 「そうだな…”クゥィッセ”と言ってみろ」 「うん、くぃっせん?」 「”ウィ”が言えてないぞ、もっと言ってみろ」 「くぅッセ…うーん…クィウェッセ…あれ…クウィエッセ…」 なかなか言えないアキラに向き合うと、じっとその姿を見つめた。 「もっと唇を尖らせて…こっちを向いて…」 「うぁ///…くゥィッセ…んっ……な、何するんですか///」 「”キス(Kusse)”って言ってたから」 「言わせたんじゃないですか///」 あきらが一生懸命『キスキス』言っていた姿が可愛らしくて、ついついキスしてしまった。 「それにキミ自身が”キスする?(Was Kussen?)”って言ってたんだぞ」 「そんな事……言ってたんですか///」 たまたま偶然だが、顔を近づけた瞬間アキラがそう言ってくれた。 本当に気が合うんだな、私たちは。 「にーたん”クウィッセ〜ン”♪」 私とアキラが見つめ合っていると、あきらに赤ん坊のように抱っこされていたくるみがその腕から降りてきて、甘えるように俺の膝の上に登り”キス〜”と言ってきたのでチュッとキスをしてやった。 「発音はくるみの方が上手いな」 「そんな…くるみちゃんは小さい子だから発音が上手いのは当たり前で…」 「ムッタァ〜モゥエヒテ トゥーリケーン ブーゼン…(ママ〜、おっぱいのみたいな〜)」 「くるみの腹が減ってるみたいだぞ」 「あっ、そうなの…僕もドイツ語分からないとね」 私も、はじめてドイツに来た小さい頃は全くドイツ語の発音も何も出来なかった。 そこで一緒にその家に連れてこられたトリスタンに言葉も生活も手取り足取り教えてもらっていたのだ。 そこでトリスタンにさっきと全く同じような事をされたのを思い出して、アキラに使ってみたのだが…これほどまでに上手くいくとは思わなかった。 本当にありがとうトリスタン。 前へ |次へ |
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