《MUMEI》

いつの間にやら智哉が来ていて、冷やかすように笑った。


「おい賢史、泣く程俺から点取ったのが嬉しかったのか?」


…え…涙?


なんで?


なんで俺泣いてんの?


拭っても拭っても涙は止どまることを知らない。


「ハハッ、なんでやろ。

急に涙が出て来よった。」


「調子のんなよ。

直ぐに取り換えして見せるからな。」


「ああ。」


強がっては見せるものの、足が思うように動かない。


観客席の方面に体を向けたままだ。


頭さえ、ぼんやりとしてきた。


異変を感じたのか、一希や味方の奴等が駆け寄って来る。


「賢史!?

どうした??!」


一希に肩を鷲掴みにされ、ようやく我に返った。


「な、何でもない。

心配せんでも大丈夫って。」


軽く笑い飛ばして見せた。


それで何人かは安心して元の位置へ戻って行ったのだが、一希だけは騙せなかった。


「何バカなこと言ってんだ?

目が笑ってないぞ。」


彼の真剣な眼差しと出会う。

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