《MUMEI》 課題(…) 「え、ええと…」 「ちなみに、前でも今でもいいけど、副部長の名前知ってる?」 (副、部長…) 「…」 「…知ってる部員の名前は?」 「頼、と、エイミーと、保と坂井と、…ええと、…」 (志貴は違うし) 「田中君、クラスメートの名前未だに言えないタイプだったりする?」 「や、そんな事は…」 (…あるかも) 俺の中で、クラスメートは『志貴とサッカー部三人組と、渡辺と瀬川』 それに 『その他』だった。 (それでも俺にとっては進歩なんだけどな…) 最初この街で暮らし始めた俺には、名前を覚えようという気持ちが全く無かったから。 出会う人間は、『普通じゃない、目立つ人間』と『普通の地味な人間』の二つに分類していた。 (懐かしいな) ぼんやりする俺に、部長 正しくは、前部長の宮崎 沙織(みやざき さおり)さんは、課題を置いていった。 それは 『今いる部員と、卒業した部員のフルネームを覚える事』だった。 「春休み明けたら、ちゃんと新入部員も覚えるように」 そう補足して、部長は帰っていった。 前へ |次へ |
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