《MUMEI》 夜、旅館に着いて──私達はそれぞれ荷物を部屋に置くと、少しの間寛いでいた。 「──ぁ!」 声を上げたのは、ミドリだった。 「見てほらっ、景色めちゃめちゃ綺麗じゃん!」 「‥池があるんだな‥」 「鯉とか泳いでたりするのかなっ」 ミドリは、すっかり燥いでいる。 そのテンションに、大人しいアゲハ君は着いていけないみたい。 「──サクヤ、明日‥もう一度丘に行かないか」 「もう一度‥?」 「ぁぁ‥焼き付けておきたいんだ。‥もう、忘れてしまわないように」 「──うん。明日また行こう」 私も、焼き付けておかなきゃ。 忘れてしまわないように──。 前へ |次へ |
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