《MUMEI》 誕生日会会場部活も休みの、三月二十五日、夕方。 「…あり得ない、だろ…」 『今年は絶対祐也の誕生日会するから! 時間になったらここに来て!』 志貴に言われて、俺が自転車でやってきたのは 高山家が経営する店の中で、一番高級で一番大きいとされる中華料理店だった。 (誕生日会って…こんな豪華な所でにやるものなのか? …多分、絶対違うよな) 自問自答の後、俺は 自転車を広い駐車場の隅に置き 立派過ぎる外観の店内に入った。 「よ!祐也、久しぶり!」 「お前、…わざわざ戻ってきたのか?」 俺を出迎えたのは、県外に引越したばかりの祐だった。 「当たり前だろ! まぁ、雅樹と、忍さんは無理だったけど… 他の連中は皆来てるぞ!」 「…当たり前だ」 (北海道からここまでは、気軽に来れないだろう) 「それに、他の客に迷惑だから、あまり大声出すなよ」 円卓のあるいくつかのテーブル席には見知ったメンバーが見えたが、当たり前だが、全く知らない他人も大勢いた。 「…何言ってんだ? 今日は貸し切りだぞ? ここにいるのは関係者だけだ」 「お前こそ何言ってんだ」 俺達はお互い目を丸くした。 前へ |次へ |
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