《MUMEI》
選ばれた出席者達
「ごめんごめん、説明してなかったね」


固まったままでいる俺と祐に話しかけてきたのは、大志さんだった。


「あっちはうちの重役達と、海外でスカウトしてきた連中」


大志さんがそう言って指差すと、慌てて座っていた面々が起立し、俺達に向かって頭を下げた。


俺も慌てて会釈を返していると


「で、あっちはファンクラブ内で行ったくじ引きで当たった幸運な人達」


いつの間にか近くに来ていた志貴が、大志さんが紹介した集団の反対側に位置する集団を指差した。


俺がそちらに目を向けると


全員、男も女も赤くなりながらバタバタと立ち上がり


バラバラに、俺に頭を下げた。


(慌て過ぎだろ)


思わず笑っていると


集団はますます赤くなり


志貴が『座りなさい』と言うまで、ずっと立っていた。


「さ、祐也。席に行きましょ」

「ちょ、志貴。俺が祐也のエスコート役だろ?」

「私の方がうまい」

「…く、否定できない」


祐は、『二人静』の劇を


劇中の、志貴の優雅なエスコートを見ていた。


「さ、祐也」

「…うん」


こうして俺は、志貴にエスコートされて一番目立つ席についた。

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