《MUMEI》
仲間結成
今宵が職員室へ向かうべく教室を出て行くと、それに吊られるように生徒たちも次々と出て行った。

そして、教室に残ったのが今宵を待つ者達だけになった時、紘が口を開いた。

「なぁ、神瀬。今宵ちゃん、あの時どうしたんだ?」

「あの時って?」

「だから、あの時だよ!!オレが仲間に入れて欲しいって言った時!!」

「そうよね。あたしも遠くから見てたけど、様子がおかしかったわ」

紘の言葉に、秋葉も頷く。

秋葉も頷いたことで、紘は更に歩雪に問いかけた。

「どうしてなんだよ。今宵ちゃんが悩んでるなら、聞きたいんだよ!!」

「あたしも。あんな馬鹿みたいに明るい雪村が、あんなふうになるなんて・・・。だから教えて、歩雪くん!!」

紘と秋葉は、歩雪の顔を真剣に見つめる。

そこにはいつもの様な、おちゃらけた雰囲気はなかった。

オレが、言ってもいいことなのか?

こいつらが信用できるとは限らない。

でも・・・こーの力になってくれると思う。

こんなふうに真剣に問い詰めてくる、こいつらなら・・・。

「琴吹、こーに『周りのことを気にしすぎ』って言ったでしょ」

「あぁ。言ったけど・・・」

「それ。こーがおかしくなった原因」

「どういうことだよ?」

「そうよ、どうしてそれであんなふうになるの!?」

ここまで言ったら、もう戻れない・・・。

歩雪は溜息をつき、重い口を開いた。

2人の息を飲む音が、静かな教室に響いた。





歩雪が話し終えて窓の外を見ると、もう薄暗かった。

夕日が隠れそうになっている。

今まで話を聞いていた2人は、しばらく黙ったままだ。

1番最初に口を開いたのは、やはり紘だった。

「オレ、マズイこと言っちゃったんだな。古傷を開かせて、今宵ちゃんを傷つけた・・・」

「そういうことを思うと、余計こーが傷つく。あいつは周りに敏感だから、また自分のせいで迷惑をかけた、って」

「神瀬・・・」

紘は組んでいる自分の腕を、きつく抱えた。

「っていうことは、あたし達がこのことを知ってるってことも言わない方がいいのよね?」

秋葉は表情を崩すことなく、歩雪を見つめた。

「このことを話したっていうのは黙ってて。下手に喋ってこーに知られたら、また傷つくから」

もう、あんなこーは見たくない。

ちゃんと笑っていて欲しい。

「だから・・・・・・頼む」

歩雪は2人に頭を下げる。

オレはどんなことでもする。

こーが笑っていられるなら。

「馬鹿!!!何してんだよ神瀬!!」

「そうよ!!あたし達がそんなことすると思ってるの!?」

紘が歩雪の肩を揺すり、強引に頭を上げさせる。

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